研究内容

現在の研究テーマ

1.電子ビーム溶解法による太陽電池用シリコンの精製

 太陽電池の生産量は増加しており、その材料となる高純度シリコンを安価に製造する方法が求められている。とくに、シリコン中のリンやボロンは冶金学的手法による分離が困難であり、除去技術の開発が重要な課題である。また、これらの元素はドーパントとしてシリコン半導体へ添加される元素であるため、製品の製造工程で排出されるスクラップシリコンをリサイクルするためにも除去技術が必要である。
 本研究は、シリコンを真空中で電子ビーム溶解することにより、リンやボロンを揮発除去し、高純度シリコンを得る手法を開発している。シリコンよりも蒸気圧が高いリンについては、電子ビーム溶解により除去することに成功している。シリコン中のボロンについては、蒸気圧が低く、単純な電子ビーム溶解では除去ができない。これまでに水蒸気添加プラズマ溶解による化学蒸発除去が報告されているが、その除去速度は遅く、電子ビームを利用した高速での化学蒸発除去の開発を行っている。

2.質量分析法を用いた高温反応解析

 精錬プロセスの高速化や、副次的に排出される廃棄物を減らすためには、反応の機構を解明する必要がある。とくに、関与する物質の熱力学的な知見を得ることは、反応が進行方法や最終的な状態を予測する上で重要である。本研究室が所有する質量分析装置では、クヌーセンセルと呼ばれる小さな穴の開いた容器に試料を入れ、高温真空下においてこの穴から流出する気体分子を検出する。また、複数のサンプルを装置内に装填することができ、これらの測定を順次行うことにより同一条件での精度良い比較が可能である。
 これまでに本装置を用いて、合金および酸化物の熱力学データを測定した。さらに、ガスの導入によって雰囲気を制御しながらの測定を実現した。現在は、シリコン系の合金(Si-P,Si-B)について調査を進めている。

3.貴金属のリサイクルプロセスの開発

 貴金属は宝飾品以外にも触媒や電子部品と用途が多岐に渡るが、産出量が少なく非常に高価である。そのため使用済みの製品から高効率な回収プロセスが必要だが、微細な形状で利用されるため物理的な分離は難しく、また化学的安定性が高いために反応させての分離も困難である。例えば、酸溶液を用いて浸出処理を行う場合、王水などの危険な薬品が必要となる。本研究では、貴金属含有スクラップに金属蒸気を接触し、貴金属を合金としてから回収するプロセスを開発している。貴金属と亜鉛との合金は、単体の貴金属よりも簡単に水溶液中へ溶解することが明らかになっており、より弱い薬品での浸出処理が可能となると期待できる。

 本研究では、亜鉛蒸気処理によって作製した貴金属-亜鉛合金の溶解を電気化学測定により調査するとともに、実用触媒等を用いた実証試験を行っている。

4.褐炭の乾燥プロセスの最適化

 石炭は可採年数が長く、生産地が偏っていないため、経済性と価格安定性に優れた化石燃料である。しかし地球温暖化対策の面からは、発熱量あたりの CO2 排出量が多いため、より高効率な利用が求められている。これまで日本は、世界の石炭の中で発熱量が大きく、かつ硫黄、鉱物や水分の低い良質な石炭を輸入し、高効率利用を行ってきた。しかし、世界的なエネルギー需要の高まりとともに良質な石炭の需給が逼迫し、価格の上昇につながっている。このため、これまで輸入していなかった褐炭や亜瀝青炭のような低品位炭についても、輸入・産業利用ができるよう、産炭国と協調して高度利用技術の開発に努めていく必要がある。

 日本の石炭の最大の輸入国はオーストラリアであるが、その石炭資源の約半分は褐炭である。褐炭の主な産地であるヴィクトリア州では、水分量が60wt%以上の極めて高い水分を含有する褐炭が産出される。褐炭の長所として、乾燥後は燃焼性の良い燃料であること、露天掘りの炭鉱が多くコストが安いことが挙げられる。一方、短所として、高水分による輸送効率の悪さと乾燥炭の粉化による自然発火が挙げられ、このために原炭は輸出されておらず、主に現地の発電所にて直焚きされている。このとき水分の蒸発に伴う潜熱分が燃料燃焼時の発熱量のロスとなることから、発電所の熱効率が低下し、単位電力量あたりの CO2 排出量が多くなっている。 これらの褐炭は、高揮発分、低灰分、低灰融点、低硫黄分といった性質のため、燃焼性やガス化特性に優れており、安価に乾燥さえできれば、ガス化による高効率複合発電や燃料改質への適用が可能になると考えられている。現在までに種々の乾燥方法が提案されているものの、実用化に至っておらず、低コスト・高効率な乾燥システムの開発が求められている。現在、我が国のプロジェクトとして、自然発火を防止するため、過熱水蒸気を乾燥媒体に用い、さらに潜熱も回収できる流動層乾燥装置の実用化を目指し、調査・研究が行われている。

 本研究では上記プロセスの基礎試験として、過熱水蒸気による褐炭の乾燥特性を調査し、基本的な知見を得ることを目標としている。褐炭の単一粒子の乾燥特性について、過熱水蒸気、比較用として空気、窒素を用いた定量的な知見を得ることにより、高効率乾燥システムの最適な設計へ知見の活用が可能となる。
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